【インタビュー】U20フットサル日本代表・鈴木隆二監督「U20の優勝は下部組織に力を入れ始めた成果」

2019年6月22日(土)、U20フットサル日本代表がAFC U-20フットサル選手権イラン2019で優勝を収めました。2017年大会では現在もFリーグの舞台で活躍する植松晃都選手や内田隼太選手、仁井貴仁選手を擁し、優勝を目指しながらもU20 フットサルイラク代表に0対1で敗れ、ベスト8で敗退。この2年の間に、Fリーグにはディビジョン2が生まれ、下部組織のチームは育成リーグを戦い、Fリーグ選抜が発足するなど、若手選手の育成、強化に力を注ぎました。今大会の優勝を受け、Fリーグと年代別代表の関わりや相互作用について、鈴木隆二U20フットサル日本代表監督にお話を伺いました。全3回で公開します。
 

2017年大会にU20フットサル日本代表として出場した植松晃都選手(湘南ベルマーレ)
 
―改めまして、AFC U-20フットサル選手権優勝、おめでとうございます。
 
ありがとうございます。僕の夢は「日本の団体ボール競技が世界のトップクラスになる」ことであり、その夢を実現してくれる選手がU20フットサル日本代表に関わった全ての選手から育つことです。
 
―まずは大会を振り返って感想をお願いします。
 
U20フットサル日本代表がこういう成果を出せたのは、日本のフットボール界の強化、育成に携わってくださるすべての関係者の皆さんの成果だと思っています。それから大会期間中、日本の多くの関係者やサポーターの方々から応援のメッセージが届きました。現地では日本人はほとんど関係者しかいないような状況でしたが、選手たちは「日本から応援してくれている人がいる」という思いをパワーに変えて、1試合1試合を戦うことができました。コーチングスタッフをはじめ、応援メッセージをくれた第1回AFC U-20フットサル選手権のファミリーである選手達、そして関わってくださった皆さんの成果であること、支えてくださったお礼を改めて伝えたいと思います。
 
―試合を通して感じたことはありますか?
 
フィールドプレーヤーは全選手が試合に出場しましたが、その全選手が得点を決めた大会唯一のチームであったということです。GK田淵広史もパワープレー返しで得点を挙げたので、GKを含め出場したすべての選手が得点を決めました。なおかつその1得点1得点が試合において重要な得点でした。GK伊名野慎だけは出場機会がありませんでした。しかし彼はチームキャプテンの1人であり、率先してチームフィロソフィーを貫徹してくれた選手でした。彼のリーダーシップと共にチームがどれだけ成長できたか計り知れず、全得点に貢献してくれました。その意味で全選手が得点を決めてくれたところが、このチームの特徴だったと思います。
 
―Fリーグ、Fリーグ下部組組織に所属するチームからも多くの選手が選出されました。特に印象に残っている試合、プレーはありますか?
 
Fリーグは13年目のシーズンに入り、現在のU20フットサル日本代表に入ってくる選手たちは、Fリーグが開幕してからフットサルに関わってきた年齢層です。Fリーグの各クラブが下部組織に力を入れ始めた成果が、この大会の結果に表れていると思います。やはり下部組織の選手たちはフットサルプロパー(フットサルに専門的に取り組んでいる選手)として、戦術的な理解度が高く、フットサルという競技に懸ける思いを強く持っています。トップチームに昇格をして、Fリーグで活躍したいという個々の選手の夢や目標については、私も毎回マインドセットを行ってきました。選手はU20日本代表に留まるのではなく、将来Fリーグトップチームに昇格し、フル代表に選ばれて活躍をしたい、世界のトップと戦い日本に勝利を呼び込みたいという夢を持つようになっています。13年を経過する中で大きな成果が表れています。
 
メンバー構成には大きく3つのグループがあると考えています。ひとつ目はFリーグ、Fリーグ下部組織などフットサルを専門的に行うチームに所属する選手層。2つ目はU18の全日本ユース選手権をきっかけにサッカーをやりながらフットサルに興味を持った、または大会で活躍した選手がサッカーからフットサルに転向する選手層。3つ目はサッカーをメインにしながらフットサルに取り組むケース。この3つのグループが相互作用しあって、いいチームを結成してくれたと思います。ここが僕自身が取り組んだサッカーとフットサルの融合に関する具体的なプロジェクトでした。
 

畠山勇気選手(Fリーグ選抜/フウガドールすみだ)はすべての試合でキャプテンマークを巻いた
 
―鈴木監督はスペインで10歳、11歳を指導されていたと伺っています。年齢層は異なりますが、10代の選手を指導した経験はU20で指揮を執る際に生きていますか?
 
まず、指導者としてのキャリアのスタートがU10〜U11の監督でした。リーグ優勝や昇格を毎年達成することで2014年にはスペイン2部Bリーグのトップチームの監督と14歳世代のカタルーニャ州選抜のコーチを兼務し指揮しました。2部Bリーグのチームは20歳前後の選手が比較的多く数人のベテランと若手をミックスしたチームでしたので、自分自身にとっては日本でU20世代のチームを指導していくということに違和感はありませんでした。
 
―鈴木監督がスペインで得たマルトレイ(スペインのフットサルチーム)のフィロソフィー「相手選手との競争、常に前向きな姿勢、味方との連係」は今大会にも影響をもたらしましたか?
 
今回のU20日本代表のチームでも選手たちには3つのフィロソフィーを伝えてきました。スペインで指揮していた時と大きく変わっていませんが、言葉のニュアンスは変わっています。一つ目は「前のめりの姿勢」。これが最も重要です。フットサルの試合の展開は、得点、失点、チャンスを作る、ピンチになる等、激しく変化していきます。どのような状況に置かれても常に前のめりの姿勢でいないといけないということを、この年代、育成の年代では大切にしています。二つ目は「シンクロすること」。これは、フットサルはピッチが狭く、考える時間がないので直感的、反射的にプレーをしていかないといけない。そういった中で、味方と瞬時に、同調できるようにする。そういうレベルまでコンビネーションを上げていくという意味を持っています。最後は「ファミリーになる」。感情というのは人間にとってとても大切で、思いをチームメートに伝えていく方法はしっかりと身につけていかないといけません。ただ、必ずしもお互いが納得して終わらないケースもあります。そこは僕から「いくら喧嘩をして構わない。言い合いをしても構わない。その時にお互いが納得しなくても構わない。ただ、君たちはファミリーだから、兄弟喧嘩や親子喧嘩のように、どんな問題が生じても必ず元に戻ることのできるチームだ」と伝えてきました。その原型はスペインで育成年代の指導をした経験が大きく影響していると思います。
 
次回は8月21日(水)正午に公開。U20フットサル日本代表のチームの結束、Fリーグの試合を視察する際のポイントについて伺います。
 
【プロフィール】
鈴木隆二/スズキ リュウジ
1979年5月7日生まれ 東京都出身
小学校でサッカーを始め、大学卒業後フットサルへ転向。2005年、フットサル日本代表に選出。日本、スペインでプロ選手としてプレー。スペインサッカー協会フットサル指導者資格トップレベル3取得。2014年以降、スペイン2部Bリーグ監督、育成年代監督、U12・U14カタルーニャ州選抜コーチ。2016年U19フットサル日本代表監督就任、フットサル日本代表監督(暫定)も務めた。