【インタビュー】名古屋オーシャンズ・フエンテス監督 -オーシャンカップ、AFCフットサルクラブ選手権を経てリーグ戦の終盤へ

2019年4月1日(月)、Fリーグ12回の優勝を誇る名古屋オーシャンズの監督への就任が発表された、フアン・フランシスコ・フエンテス・サモラ、通称フエンテス監督。就任から1カ月半後に行われたオーシャンカップ2019でチームを優勝に導き、全勝優勝を掲げて2019/2020シーズンのリーグ戦に臨みました。
 
他チームも着々と力をつけており、リーグ戦前半戦で2敗を喫しながらも、8月に行われたAFCフットサルクラブ選手権タイ2019では一次ラウンドを全勝で1位通過。決勝ラウンドでも全勝し、タイトルを獲得しました。残すFリーグ、そして全日本フットサル選手権での四冠を目指すチームについて、AFCフットサルクラブ選手権を軸に伺いました。
 

―改めましてAFCフットサルクラブ選手権での優勝、おめでとうございます。大会を通しての感想をお願いします。
 
AFCフットサル選手権は、非常にタフで難しい大会でした。特に私たちが入ったグループは、4グループの中で一番難しいグループだったのではないかと思います。強豪のメス サンガン ヴァルザガン(イラン)もいましたし、私が以前関わっていたクウェートも非常にレベルが上がっている国なので、カズマSCとの対戦もタフでした。初戦ではアルダフラ FC(UAE)と戦い、先制点を取られるという展開だったので、本当に1試合も簡単なゲームはありませんでした。さらに決勝ラウンドでも難しいゲームが続いた中で、最後に目標を達成したという大会でした。
 
―特に印象に残っている試合、難しかった試合を教えてください。
 
正直に申し上げると、どれかひとつの試合を挙げるのは非常に難しい大会でした。ただ、私たちは戦った6試合の中で、しっかり段階を踏んでこられたのではないかと思っています。作り上げてきた課程が大事であり、しっかりプロセスを踏んで進むことができたことが、最終的な目標の達成につながりました。1試合目では初戦ならではの緊張感がある中で先制点を決められてしまいましたが、しっかりと切り替えて覆すことができ、その後の緊張感をほぐす要因になったと思います。2試合目では、レベルを上げてきているクウェートに対し、より競争力を高めたと感じています。3試合目ではメス サンガン ヴァルザガン(イラン)と対戦し、1位、2位を争う、負けてもおかしくない相手とのゲームをしっかり勝ち切ることができました。一次ラウンドを1位で上がるのと2位で上がるのとでは、決勝ラウンドでの戦い方も変わるので、ここで勝ち切れたことがポイントになったのではないかと思います。
 
準々決勝では、ゾーンで守るディフェンスを受けました。このディフェンスは、私たちが今までにあまり体験したことのない戦い方だったので、かなり苦戦してしまい、戦術的に非常に難しいゲームになりました。その試合を勝ち切ったあとの準決勝は、精神的なケアが必要なゲームでした。タイ・ソンナムFC(ベトナム)には昨年、AFCフットサルクラブ選手権で負けていますので、その相手に勝利するということは精神的な負荷が高く、プレッシャーを感じる中でしたが、勝利を収めることができました。決勝では、アジアの強豪であるメス サンガン ヴァルザガン(イラン)と再度対戦しましたが、一度勝つのも難しい相手に対し、同じ大会で二度勝利するということは、初めての経験でしたし、何度も勝てる相手ではありません。その中で、積み重ねてきた過程があり勝ち切る感覚を持って決勝の舞台に上がれたので、選手たちは自信を持って臨めた試合でした。世界3位という成績を持ち、世界的に認められたチームと戦う中で、この自信が結果につながったと思います。
 
―フエンテス監督就任前の昨季、名古屋オーシャンズはリーグ戦無敗、全日本フットサル選手権優勝と強さを示しました。監督に就任した当初の名古屋オーシャンズの印象を教えてください。また、当初の印象から変化した、成長した点がありましたら教えてください。
 
まず、私は自分流のフットサルをチームに取り入れ、監督としての自分の色を出していければ、という思いで活動をしています。その上で、昨シーズンの情報を取り入れ、来日をしました。ただ、昨シーズンと比較するのではなく、今後どういう目標を持ってチームとして活動していくかについて考えることが大切だと思っています。ただ、名古屋オーシャンズは昨シーズン、より成長した1年だったのではないかと思います。間違いなくいいものを持っているチームなので、歴代の監督たちが残したものを生かしながら、自分流の戦術を取り入れて成長していけたらと思います。
 
初めて合流した時からチームの印象は非常によく、さらに日本人は真面目で努力家だと感じました。トレーニングを行っていく中でもトラブルもなく、選手たちは非常に練習熱心です。監督が変わることもそうですし、チームに変化が起こったシーズンは、モチベーションが高くなる傾向にあります。私が来日し、指導を始めてからのチームもとてもモチベーションが高く、私の意見に耳を傾けてトレーニングに臨んでくれているので、選手たちには感謝しています。
 
―今季のリーグ開幕前のカップ戦で優勝し、アジアを制するクラブでもある名古屋ですが、リーグ戦では今季2敗を喫しています。フエンテス監督から見たFリーグ全体のレベルや他チームの印象を教えてください。
 
Fリーグのチームに対しては、とてもいい印象を持っています。その中で、名古屋の選手たちもしっかりと高いモチベーションを持って日々のトレーニングに臨んでくれてるおかげで、チームはまとまりを見せています。レベルの高い選手も多く、チームとして戦うことができ、私の考えも理解してくれているので、開幕前のカップ戦を制覇することができ、AFCフットサルクラブ選手権の優勝にもつながったと思います。ただ、私たちの戦いはこれからだと思っています。何か大きなことを達成した時こそ、より対戦相手は準備をしてきます。私たちにも今までになかったプラスアルファのプレッシャーがかかりますし、相手にも高いモチベーションが生まれます。そういったものに、今後は打ち勝っていかないといけません。勝てた試合のことを考えながら行動することは、油断につながります。AFCフットサルクラブ選手権を終えた後から、足元を固めて、新たなスタートを切っています。Fリーグには、弱いチームはいません。手強い相手ばかりです。そういった中で1試合ずつ、勝点を重ねていくことが、とても大事になってくると思います。
 
相手が高いモチベーションを持って臨んでくるという意味では、第14節のフウガドールすみだ戦が正にそうでした。大きなことを成し遂げた後はより注目されますし、相手は対策をして勝ちにくる、というのが自然の流れです。この先もそういったゲームは増えてくるのではないかと思います。そして私たちは、よりブラッシュアップをして、チームとして成長していかないといけないと思っています。チームというのは、自分たちより上に立っている者に対して勝ちにいくという意識が生まれた時に、よりシビアに細かいところまで修正をしていきます。上位のチームと対戦した時というのは、力を出し切ってしまい、次の対戦相手との試合で勝てると思っていた相手でも負けてしまうということは起きうることです。私たちは、対戦相手が力を入れてくださっているという思いを感じ取って、その思いに応えて全力でぶつかっていけるようなチーム作りをしていかなくてはならないと思います。
 
―リーグ戦は終盤戦に向け、競争が激化しています。かみすセントラルの2連戦、また終盤戦の目標を教えてください。
 
リーグ戦の真っ最中にAFCフットサルクラブ選手権がありました。リーグ戦でも結果を残さなくてはならない。AFCでも優勝するという目標を掲げている。AFCに出発する1週間前までリーグ戦があり、戻った後もすぐに試合がありました。AFCに近づいていくにつれ、目の前のリーグ戦での結果を求めながらも、AFCにも気持ちがいってしまうという状況でした。AFCで結果を残すのであれば、その対策も準備もしないといけない。リーグ戦に100%向かえたかというと違います。AFCでもいい結果を残すことを見据えて、活動をしていました。後半戦に向けては、リーグ戦だけに集中できる状況になりました。ひとつ大きな目標を成し遂げたので、今度は100%の準備をし、毎試合いい結果を残せるように1試合1試合にフォーカスしています。
 
私たちの方向性、考え方では「継続」を大切にしています。かみすセントラルでは、シュライカー大阪と立川・府中アスレティックFCという強豪との2連戦になります。そういったチームと対戦する中で、ひとつひとつしっかりと準備をして戦っていきたいと思います。この時期に差し掛かると、疲労が溜まり、精神面でもフィジカル面でも影響が出てきます。かみすセントラルまでにしっかりとコンディションを整え、選手の疲労回復にも努めながら、いい状態で臨めるようにしたいと思います。
 
【プロフィール】
フエンテス(フアン・フランシスコ・フエンテス・サモラ)
1979年9月12日(39歳)/スペイン・ムルシア生まれ
 
【主な経歴】
■監督
2005-2013 エルポソ・シウダー・デ・ムルシア(スペイン2部)
2014-2015 Karma Sports Club(クウェート)
2015    ルパレンセ(イタリア)
2016    アクア・サポネ(イタリア)
2017-2019 FPハーレ・ゴーイク(ベルギー)
 
■アシスタントコーチ
2005-2013 エルポソ・ムルシア(スペイン1部)