北原亘氏「初戦から楽しみながら、自分たちのプレーを出してほしい」ー2大会ぶりのワールドカップ出場によせて

9月12日(日)に開幕するFIFA フットサルワールドカップ リトアニア2021に、フットサル日本代表が出場します。
 
2大会ぶりの出場で歴代最高成績のベスト16を上回る好成績を目指すフットサル日本代表に向け、9年前の2012年大会に出場したメンバーから応援の声が届きました。2012年当時を振り返りながら、日の丸を背負う責任や大会の展望について伺っています。
 
第1回は、2007シーズンのFリーグ開幕から9年間、名古屋オーシャンズでプレーし、現在はABEMAの解説で活躍する北原亘さんからのコメントを紹介します。
 
■北原さんにとって「フットサル日本代表」とは?
 
代表選手として一番学んだことは『誇り』です。国を代表して戦う責任、全フットサル選手を代表して戦う責任、その責任を背負いながらいかに誇りを持って世界の強国と戦う覚悟を持てるのか?ということを、歴代の先輩方から学びました。正直、代表に初選出された時は「代表に選ばれて嬉しい」「有名になれる」という気持ちが先行していて、代表選手としての誇りを持つことができませんでした。そのなかで諸先輩方が練習から誇りを持って戦っている姿勢を見て、圧倒されたのを今でも鮮明に覚えています。そこから「自分自身が誇りを持って戦うにはどうしたらいいか?」、そして、「後輩達に誇りを持って戦ってもらう為にはどうしたらいいか?」を考えるようになりました。Fリーグの選手活動に生きたこととしては、世界の強度やプレースピードを体感することにより、自身のプレースピードが格段に上がりました。世界との差を知るということがいかに重要であるかを体感できる場が、日本代表でした。
 
■2012年大会で印象に残っている試合やエピソードを教えてください
 
印象に残っている試合はなんと言っても「ポルトガル代表戦」。開始早々に0-3にされた時、自分たちのあり方を問われる瞬間でした。その時に感じたのは、「このままじゃ終われない」という強い気持ちと、今まで支えてくれた多くの人たちの顔、そして頼もしい仲間の存在。チーム内で一番苦しんでいた(森岡)薫が代表初得点を決めた瞬間に、「この試合はイケる」と感じたことを思い出します。点差を縮める度に、ボルテージが上がっていく会場は最高でした。戦っているのは自分たちだけではない、と再確認できたあの試合は一生の思い出です。
 
公式戦以外の代表活動ですと宿泊部屋の相方はランダムで決まるのですが、公式戦はリラックスできるメンバーと同部屋になります。私の相棒は小学校からの同級生の稲葉洸太郎。洸太郎を求めて、藤原(潤)や冨金原(徹)、高橋健介が部屋にしょっちゅう来るので全然リラックスできない。昼寝して回復したい時に昼寝ができないので、よく怒っていました。今となってはいい思い出です。
 
■グループステージの展望や注目の選手など、今回の大会のみどころを教えてください
 
注目してほしい選手は名古屋オーシャンズの吉川智貴選手。個人的には、過去も含めて日本最高傑作の選手だと思っています。まさにピッチ上のコンダクター。彼がひとたびピッチに立つと、チームは演奏しているかのように動き出します。是非、彼が味方を助ける動きに注目してほしいです。
 
名古屋オーシャンズの星兄弟にも注目です。二人とも私の出身校でもある暁星学園出身。兄の翔太選手は私の3歳年下ですが、若かりし頃のあだ名が『狂犬』とあったように、よく噛みつかれていました。あの頃は怖かった・・・。物事を整理して捉えるのが得意で、非常に聡明です。今シーズン限りでの引退を表明しているので、彼の勇姿をワールドカップで見られる最後のチャンスです。
 
弟の龍太選手は、元々は兄と違っておとなしい性格で人見知り(ピッチ上では破壊神ですが・・・)。ただ、それではもったいないと思い、彼が名古屋オーシャンズに入団してから社交的になるよう働きかけたら見事に開花し、今は所属チームでキャプテンを務めるまでになりました。人の変わりように圧倒されました。兄弟揃っての最初で最後のワールドカップ。夢の舞台を楽しんでほしいです。
 
最後に(名古屋オーシャンズの)八木聖人選手のことも書こうと思いましたが、文字数が足りないのでやめておきます。
 
■2大会ぶりの出場を果たしたフットサル日本代表へ、エールをお願いします
 
今大会は、ベスト4を目指しての戦いになるかと思います。そのなかで重要なのは、初戦のアンゴラ戦。未知な相手ではありますが、事前情報ですとかなり個人技が高い選手が在籍していると聞いています。星翔太選手、逸見ラファエル勝利選手以外にとっては、初のワールドカップという大舞台です。緊張はもちろんあるとは思いますが、初戦から楽しみながら、自分たちのプレーを出してほしいと思います。初戦でいい入りができれば、今の日本代表には必ず結果もついてくると思います。
 
短期決戦においては、いかにチームとしてまとまって勢いをつけるかが重要です。コロナ禍の影響でコミュニケーションを取る機会は普段より減っているかと思いますが、制限された環境下でも、お互いに今考えていること、今感じていることをぶつけあい、更に関係性の質を高めてもらいたいと思います。ワールドカップを戦うこのメンバーは、最高で最強です。是非、自分たちの力を信じて戦ってください。日本で共に戦いたいと思います。頑張れ、にっぽん!!