小宮山友祐監督「自分自身のために全力を注げば、必ずチームや日本のためになる」ー2大会ぶりのワールドカップ出場によせて
9月12日(日)に開幕するFIFA フットサルワールドカップ リトアニア2021に、フットサル日本代表が出場します。
2大会ぶりの出場で歴代最高成績のベスト16を上回る好成績を目指すフットサル日本代表に向け、9年前の2012年大会に出場したメンバーから応援の声が届きました。2012年当時を振り返りながら、日の丸を背負う責任や大会の展望について伺っています。
第9回は、バルドラール浦安でFリーグ開幕を迎え、2016/2017シーズンでの引退後はアシスタントコーチを経て、現在は同クラブで指揮を執る小宮山友祐監督からのコメントを紹介します。
■小宮山監督にとって「フットサル日本代表」とは?
人生のすべてです。今の自分はフットサル日本代表がなければ存在していないと思います。初めて日本代表としてピッチに立った2004年の世界選手権は、世界の舞台で戦える喜びや興奮よりも、日本の為に戦う強い気持ちや覚悟、色々な感情や想いがありました。そこで世界のレベル、世界との差を目の当たりにしました。また、この大会で私はイタリア戦の1分間しか出場できず、ピッチの上で選手としてフットサル日本代表のために何も貢献する事ができませんでした。その悔しさを今でも良く覚えています。あの時の悔しさがあったからこそ、フットサルに人生を賭けて取り組み、もう一度ワールドカップの舞台に立ちたい、世界を相手に戦いたいという思いを強く持ちました。そう思わせるものがフットサル日本代表でした。
まだFリーグがなかった時代でもあり、どう世界との差を縮めるのか。日々、自分と向き合い、仲間と一緒に試行錯誤しながら、次のワールドカップを目指し、人生を賭けた挑戦をすることになりました。今でこそ指導者ライセンスが整備され、多くの指導者から教わる機会が増えましたが、当時は指導者の数は少なく教わるよりも自分たちで考え、まずやってみるという習慣がほとんどの選手にあったと思います。それは、選手としてとても大切な部分です。指導されるのを待つのではなく、自らが自分の課題やチームの課題、修正点に目を向けて良くなるための行動をし続けることは、今の時代にも必要なことだと思っています。
Fリーグが開幕してから迎えた2008年のワールドカップブラジル大会では、バルドラール浦安へ移籍し、日本代表選手たちとクラブでも一緒にプレーできるようになったという大きな変化がありました。代表活動の短期間だけでなく、普段からクラブで一緒にトレーニングができ、定期的に高いレベルの試合ができるようになったこと、外国籍選手と対戦する機会が増え、高いレベルの選手たちとプレーする機会が増えたことは、非常に大きな経験となりました。
しかしながら、この大会も初戦でブラジルに1対12で敗戦し、けが人等もあり、チームの雰囲気は最悪でした。チームがバラバラになりかけましたが、みんなで修正し、再度決勝トーナメント進出を目指しました。ソロモン諸島、キューバに勝ち、グループステージ突破をかけた最終戦でロシアに再度大敗し、2勝2敗でグループステージ敗退という結果となりました。この大会は選手、スタッフを含めチーム一丸となってワールドカップを戦い抜く事の難しさを痛感した大会でした。ひとつになるというのは本当に難しいことを日本代表という場で痛感し、その思いは今でも常に頭の片隅にあります。
■2012年大会で印象に残っている試合やエピソードを教えてください
2012年大会は全てにおいて特別な大会でした。全ての試合が色濃く印象に残っていますが、中でも私はベスト16で対戦したウクライナとの試合が印象に残っています。私の日本代表選手としての最後の試合となったあの試合は、本当にもったいない試合だったと今でも思っています。事前の北海道での国際親善試合ではウクライナに勝つことができたので、「この試合も勝ってベスト8に進出する。進出できる」という現実的な目標、思いが少なからず個人にもチームにもあったと思います。しかしながら、前半だけで0−6の大差をつけられてしまいました。ハーフタイムで切り替えはしましたが、なかなか全員が現実を受け入れられなかったです。そして、9年経った今でも「なんであのような試合になってしまったのか」がずっと頭の中を巡っています。
ベスト16を達成したことで満足する選手、スタッフは1人もいませんでした。全員で更なる高みを目指していただけに、油断や慢心もなかったと思います。日本に帰国してから「初の決勝トーナメント進出おめでとうございます」「ベスト16おめでとうございます」と言われても、正直、嬉しさよりも悔しさの方がありました。「もっとやれた」「もっとできた」、その思いが私の中には強くありました。
だからこそ、ワールドカップの後にミゲル・ロドリゴ監督より、「もう代表には招集しない」という言葉をいただいても、「もう一度ワールドカップに出たい」「日本代表の強さを世界に知らしめたい」という思いが強くあり、2016/2017シーズンまで現役を続けました。選手でいる以上、フットサル日本代表に呼ばれるチャンスは0ではないと信じていました。結果として、その後は代表に呼ばれることはありませんでしたが、あのウクライナ戦があったからこそ、私の選手としてのキャリアは長くなりました。フットサル日本代表を目指し続けることは、自分にとって改めて特別なものなのだと感じました。
■グループステージの展望や注目の選手など、今回の大会のみどころを教えてください
グループステージを突破するためにも、初戦のアンゴラ戦が全てだと思います。スペイン、パラグアイは過去に対戦経験もあり、どのようなチームかは予想がつきますが、アンゴラは対戦経験もなく未知数です。ワールドカップに出てくる国なので弱いことはありませんが、初戦でそのような未知の国と戦うのは不安が少なからずあります。ですが、グループステージを突破するためには、初戦は絶対に勝たなくてはなりません。引き分けでも厳しくなると思っています。勝利のポイントとして、私はピヴォの3選手に注目しています。ベテランの星翔太選手、絶対的エースになりつつある清水(和也)選手、若手の毛利(元亮)選手が相手にとって嫌なプレーをし、ゴールを奪い、ゴールに直結するプレーを初戦からでき、勝利ができたら、チームは勢いに乗ると思います。親善試合を見ていても日本代表のディフェンスは非常に強度が高く、素晴らしいディフェンスをチーム全体で行っています。あのディフェンスがあれば、簡単に失点をすることありません。そうすると勝利へのポイントは得点だと思います。セットプレーやパワープレー等、得点できる局面は多々あるとは思いますが、流れの中で取るべきポジションの取るべき選手が得点をすると、一気にチームの雰囲気はいい方向に向かうので期待しています。
■2大会ぶりの出場を果たしたフットサル日本代表へ、エールをお願いします
大会自体が1年延期となり、コロナ禍で迎えるワールドカップに向け、監督、選手、スタッフの皆さんはとても大変な思いの中、最大限の取り組み、努力をされてきたと思います。まずは、これまで取り組み続けたものを全てピッチに出し切ってほしいな、と思います。誰一人として後悔することのない大会にしてほしいですし、素晴らしい試合、結果を期待しています。日本のため、チームのための前に、自分自身のために全力を注いでください。自分自身のために全力を注げば、必ずそれがチーム、そして日本のためになります。色々な思いや覚悟、重圧を背負っているかと思いますが、この舞台に立てることは一生で数多くあることではありません。ぜひ、楽しんでプレーをしてほしいな、と思います。私にはそれができませんでしたが、どんな舞台でも楽しむことは大切だと思います。ぜひ、がんばってください。心からフットサル日本代表を応援しています。