フットサルワールドカップを終えて/皆本晃選手(立川・府中)
10月3日(日)に閉幕したFIFA フットサルワールドカップ 2021リトアニア。今大会に2大会ぶりに出場したフットサル日本代表選手のなかからFリーグ所属選手に大会の感想や今後のFリーグについて聞きました。
皆本晃選手/立川・府中アスレティックFC
-改めてワールドカップを終えての感想をお願いします。
「帰国してから考える時間がすごく多く、色々なところから振り返っていますが、自分にとっては素晴らしい大会ではなかった、というのは間違いなくあります。チームとしてはできたこと、到達できた地点もありますが、個人的には・・・色々な言葉を考えたんですが『やり切った感覚はあるし、やれることはやったけど、自分が満足しているかと言ったらしていない』というところがあります。ピッチに立ったらもっとやれるんじゃないかということが発揮できなかったし、それは発揮できる、出し切れる環境を作る実力が自分になかったからだな、と解釈しています。ただ、それも含めて自分が続けてきたことでもあるから、『これをやっておけばよかった』『これをやらなかったからだ』という悔いはありません。だからこそ、なんとも言えない気持ちであるというのが正直な感想です。ただ、その一方で長いフットサル人生を振り返った時に、2009年に代表に初招集されてから長い期間のなかで、22歳で初招集された時は一番若手で遠征にもとりあえずついていくけど1分も出場できないという時期から始まり、4年ほどで主力としてチームを動かす期間を過ごし、その後はキャプテンも任され、今回は試合にあまり出られなかったけど縁の下の力持ち、ベテランとしてチームを支える仕事もすることができました。ずっと真ん中にいたわけではないけど、すみっこから先頭まで任され、今回はまたすみっこでチームを支える役割をできたということは、誇りに思っていいのではないか、と思いました。ワールドカップだけを振り返ると長く携わってきて、フットサルキャリアのすべて、人生のすべてを懸けて挑んだ大会がこういう結果だったことは納得のいっていない部分もあるけど、長いスパンで振り返ると大事なひとつの仕事、代表にとっての重要な仕事をできたのではないかと思います」
-自身が納得のいく出場時間ではなかったと思いますが、通用したと感じた部分と通用しなかったと感じた部分を教えてください
「それがあまり分からなかった、というのが一番納得のいっていない部分かもしれません。自分はポイントで少し出て仕事するようなタイプの選手ではないと思っていて、これまではチームの真ん中でチームを動かすなかで、自分の特徴や持てる力を発揮できるタイプだったので、今大会は通用したとも通用しなかったとも思えないというか・・・。もちろん細かい部分での分析はあり、今後に生かしたいとも思っていますが、個人的にはそういったところが測りきれなかったのが一番満足できなかった部分だと思っています。あとはやはり、背が小さいフィクソでも世界でプレーできる、サイズだけではないということを証明したかった大会だったので、それを見せる時間をあまり与えられなかったと感じています。ですが、それはそこまでの過程で自分がチャンスを生かす時間をもらえなかっただけなので、シンプルに自分の実力が足りていなかっただけだと思っています。もしかしたらチャンスをもらってもボコボコになっていたかもしれないけど、逆を返せばここで満足感を得られなかった、納得いかなかったことがこれからの人生で必ず生きてくると捉えています。決してハッピーな経験ではありませんでしたが、今後に生かしていきたいと思っています」
-敗退後、ベスト8以降の試合は見ましたか? 日本と世界の差、アジアと世界の差はどのように捉えていますか?
「はい、すべての試合を見ました。結果が示すとおり、縮まってきていることは間違いないと思います。ただ、追い越そうと思った時には世界もこれからさらに進んでいくので、追い越すことはまた別問題なのかな、と。だからこそこれからも日本はどんどんチームとして強化していかなければいけないと思っています。今回ワールドカップに出場したことで一番よかったのは、代表に入る選手は常に世界を視野に入れながら過ごしていて、フットサルのチャンピオンズリーグや世界の情報はチェックするようにしていますが、ワールドカップに出場したことによって世界との距離など情報が入りやすくなり、日本フットサル界全体が世界のレベルを共有できたことはすごく大きいと思っています。その影響で刺激を受け『今のままではダメだ』と多くのフットサル関係者が感じたことが重要です。僕たちの世代が5年前に出場を逃したことで、世界との距離を見失う結果になってしまっていたことを申し訳なく思っていたので、ワールドカップに出ることで世界との距離を知り、何をするべきか考えることが増えてくるといいな、と改めて思いました」
-では、その差を埋めていくためにはどのような働きかけをしてきたいですか?
「それぞれの立場や状況により働きかけは違いますが、僕個人としてはリーグのレベルを上げていくことしかないと思っています。選手自身のメンタル面でのアプローチもそうですが、フットサルのプロフェッショナルとしての環境を作っていかないとレベルは上がっていかないと思います。海外との強化試合を増やしたり、選手が海外に出ていったりすることも大事ですが、一番大事なのは国内のトップリーグが常にどういったレベルで競争していくか、だと思います。リーグのレベルが上がれば海外から来る選手も増えると思いますし、両方向での働きかけが必要かな、と。Fリーグの中での競争をもっと増やしていかないことには、近道はないと思うので続けていくしかありません」
-立川・府中初のワールドカップ出場選手となりましたが、大会で得た経験はチームに戻ってどのように還元していきたいですか?
「始めにみんなに言わなくてはいけないのは『選手として活動できる時間は長くないよ』ということだと思っています。この一言に尽きますね。後からやりたくなっても、一生戻ることはできない場所だと思います。僕も怪我を抱えながらプレーする年齢になって、練習をしたくてもできない経験もしています。チームにはもちろん大ベテランの選手もいますが、若い選手も多いので、『時間は思うほどない』ということはまず伝えたいです。また先ほどの話と重なりますが、Fリーグでできていてもワールドカップでできないことはたくさんあるので、全員がレベルアップする意識を持たない限りはFリーグのレベルは上がりません。若い選手が多いチームですが、みんながワールドカップを見て、何が起きたかを認識していると思います。仲間をうまくするためには自分がうまくならなくてはいけない、という意識を持ってチームとしてどういう方向に進んでいくかを忘れないように伝えていきたいと思います」
-これからFリーグで自分をどのようにアピールしていきたいか、どんなところを見てほしいか教えてください
「選手としてやれる限りは粘りたいと思っています。何が見せられるかというと正直分からないですが・・・。これから先、そう長くはない選手生活でいいプレーばかりではないと思いますが、選手としての生き様や思いが伝わるようにしたいと思います。選手の間でしか伝えられない多くのことを次の世代に繋いで、そういった選手たちが躍動する姿を見てもらいたいと思います」
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