開幕5試合で7得点!覚醒中“コワモテ”パワーシューターの決意「16人全員で戦って、優勝へ」(中村充/立川アスレティックFC)|月間MVP受賞インタビュー

6月のFリーグ月間MVPは、立川アスレティックFCの中村充選手が受賞。第2節からゴールを重ね、第4節のハットトリックを含む7得点で得点ランキングは首位タイ。立川の3人キャプテンのうちの一人、中村選手の受賞インタビューをお届けします。

インタビュー=本田好伸(SAL
編集=伊藤千梅(SAL

※インタビューは2024年7月5日に実施しました

■印象に残っているのは決勝点より先制点

──6月のFリーグ月間MVPの受賞おめでとうございます!率直なお気持ちはいかがでしょうか?

ありがとうございます。実は、スタッフから連絡が来た時はジムにいたのですぐに見られなかったですし、まさか選ばれると思っていませんでした。でも、うれしかったです。

──文句なしの選出ではないでしょうか。

チームとしては、(7月5日時点で)得失点差ながらも1位にいて、個人としても点を取れていてうれしいです。チームとしていい傾向だと思います。ただ、自分のなかでは納得できないミスがいくつかあったので、うれしいですけど、他の選手が選ばれていても「なんで俺じゃないんだ」とは思わなかったですね。

──SNSで投稿されたコメントは「ありがとうございます」の一言。ある意味、中村選手らしいシンプルさでしたね(笑)。

SNSは、フォローしてくださっている方に向けて「試合があります」「勝ちました」「負けました」という報告をするために更新しています。なので、今回も応援していただいているみなさんに向けて、「MVPを取りました」と報告はしておきたいな、と。

そもそもあまり写真を撮らないですし、文章を書くのも得意ではないので、そこまでSNSを更新するタイプではありません。ただ僕がMVPに選ばれたことで「自分も頑張ろう」と思ってもらえるという声を聞いたことがありましたし、応援していただいている分、選手として報告くらいはしないといけないという気持ちで投稿しています。

──開幕から5試合で7得点。特に印象に残っているゴールはありますか?

北九州戦の1点目や横浜戦の1点目など、決勝点よりも先制点が大事だと思っています。チームを勢いづけるために必要ですし、いい攻撃をしていても点が入らないとリズムが崩れてしまうこともあるので。ここまでの5試合は先制点のほうが印象に残っています。

──ゴールを重ねられている理由はなにかありますか?

シーズン最初の全体ミーティングで、昨シーズンの総得点81点のうち、約4分の1の23点を(新井)裕生が取っていたという話がありました。(上村)充哉も取材などで話していましたけど、1人1点取れば、15点分を埋められる。昨シーズンは僕がチームで2番目に点を取っていましたし、裕生がいない分、僕が決めるべきところで決めないと、勝てる試合を引き分けにしてしまったり、負けてしまったりすると思っています。これまで以上に点を決めるという気持ちが強いので、よりゴールに貪欲になっているのかなと思います。

──中村選手のプレーは自信に満ちあふれているように感じます。

正直、得点が取れているのは、タイミングと運です。北九州戦の3点目もそうですが、いいところにボールが落ちてきたのは運とタイミングもあります。コンディションがものすごくいいわけではないですけど、しっかりと試合に向けて調整して臨めていると思います。

──このペースでいけば、シーズンで40点を狙えます。

そうですね(笑)。このペースでいけばそうなりますが、どのチームと戦っても簡単な試合はないですし、点が取れない時期も必ずくると思います。そういう時でも、セットプレーやカウンターで、僕が点を取らなくてもチームとして点を取って勝てれば、それが一番いい。チームの勝利を目指すなかで、僕も得点で貢献できたらいいなという気持ちです。

 

■クラブ初のスペイン人監督は通訳いらず

──監督が交代し、やり方も変わったと思います。チーム状態はどうですか?

監督が比嘉(リカルド)さんからサバスに代わって、やり方が違う部分も多くあります。今シーズン、チームとして良くなっているのは守備ですね。サバスからも、去年の失点数が76点であったことから「これじゃ勝てない。減らさないといけない」と強く言われています。失点に絡んではいけないという雰囲気が昨年以上に練習からある気がしていますし、その積み重ねが試合でも現れていて、失点が少ない状態でここまで戦えています。

また、毎年のように主力が抜けている分、逆に言えば今までチャンスのなかった選手が試合に出て活躍する機会が増えています。サバスはそれぞれの選手の長所を引き出すのがうまいと思いますし、そういった面がつながって勝てているのかなと思います。

──サバスさんは記者会見でも通訳をつけないで話していますが、普段はどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?

通訳はいないですね。僕らも、試合後の取材と同じように日本語で話しています。チームが始動した時に親睦を深める機会があったのですが、日本語は話せないだろうと思って英語で話しかけたら「私は日本語ができるから、日本語でしゃべりなさい」と言われました(笑)。日本に来ているからこそ、その国の言葉で話したいという彼なりのリスペクトがあるみたいです。基本的に練習内容もボードを使って説明してくれるので、監督の言いたいことは最低限、僕らにも伝わっていると思います。

──そうなんですね。サバス監督はどんな監督ですか?

監督と選手の立場を保ちながら、どんな選手でも平等に同じテンションで話してくれます。監督として、良くないところははっきりと伝えてくれますし、わからないことも聞けばなんでも答えてくれます。若手がアドバイスをもらっている場面も多く見ますし、プレーについて聞くと、試合中であっても答えてくれることがあります。

あとは、分析に長けている監督です。練習の前に必ずミーティングをして、こういうところを狙えとか、相手はここが強いと伝えてくれます。アスレにとってもスペイン人監督は初めてのことですが、いい感じで新しい風が吹いているのかなと思います。

──中村選手は今シーズンからキャプテンの一人になりましたが、チーム内ではどんな立ち位置ですか?

どうでしょう(笑)。自分で言うのは難しいですが、年齢的にちょうど真ん中くらいなので、テツさん(完山徹一)、(皆本)晃さん、(檜山)昇吾くん、(酒井)遼太郎くんといった上の人たちとも普通にしゃべります。一番年下の(内海)礼斗を練習中にいじったり、(湯浅)拓斗に水をかけたりと、若手とはふざけていますね。僕は充哉みたいにリーダーシップを発揮して引っ張っていくとか、テツさんみたいに経験値があるわけでもないので、キャプテンとしては彼らのほうがやってくれている部分が多いですね。

──中村選手はピッチ内外でストイックに取り組まれているイメージもあります。強烈なオーラは、一見すると怖さを感じるような雰囲気もありますが……。

後輩などにも、第一印象はだいたい怖いって言われます(笑)。僕は15歳で町田アスピランチに入ったので、5、6歳上、へたしたら一回り上くらいの人たちもいました。そこでなめられたら終わりだと思っていましたし、やられたらやり返してやろうくらいの気持ちでいたので、けっこう尖っていたと思います。そこからトップに上がったところを見ている人たちからすると、怖いという印象をもつのはしょうがないかもしれません。

──金髪という部分も……。

そうですね(笑)。見た目もそうだと思います。立川に移籍して来た時は、裕生から「もっと練習中からうるせーやつだと思った」と言われました。試合の時はウザかったそうです(笑)。同じ時期に移籍して来た拓斗や(永田)周也にも「怖かった」と言われました。

 

■いつ日本代表に呼ばれても、すべてを出せる準備を

──昨年、フル代表に初選出されました。その後、ウズベキスタン遠征にも選ばれましたが、国内で行われたアルゼンチンとポルトガルとの親善試合には入れませんでした。

ウズベキスタンでの試合では、ミスが多かったです。守備の強度や、戦術理解度も長くいた選手と比べて低かったと思います。その後に呼ばれなかったことは悔しいですけど、ウズベキスタンでの映像を見れば、自分が結果を出していないので仕方がないな、と。僕がなにかしらのインパクトを残せれば結果も変わったと思いますし、与えられた時間のなかできっちりアピールできなかった。そこが僕に足りなかった部分だったと思います。

──今年4月に行われたアジアカップは見ていましたか?

仕事のためリアルタイムで見られない時もありましたが、結果はずっと追っていましたし、映像を見られる時はチェックしていました。勝ってほしいと願っていました。勝ち上がらなければ、その先もないですから。ただ、裕生が点を取った時は素直にうれしかったですね。一緒にやっていた選手が活躍して、点を取ってくれたのはすごく刺激になりました。

──ただ、選手として悔しい気持ちも。

もちろん、それはあります(苦笑)。あの場にいたかった気持ちはものすごく。ただ、いけなかったのは自分の実力なので。とにかく勝ってほしかったというのが大きいですね。

──あらためて代表への思いは?

代表はすごく特別です。選ばれなければ日の丸を背負うことはできないし、戦うこともできません。リーグで結果を残さなければ代表監督の目に留まることがないし、コンディションが悪くて調子を落とし続ければ選ばれない。常に高いレベルをキープしないと呼ばれない場所だと思っているので、そこに向けてやっていかないといけない部分が多くあります。

U-20アジアカップで優勝できなかった悔しさもありますし、僕らは借りを返さないといけないので。いつ呼ばれても、行った時にすべてを出せるように準備しています。

 

■16人全員で初の優勝へ

──得点ランキングを見ても顕著ですが、今のFリーグは中村選手と同年代の選手が中軸を担っています。得点王争い中の浦安・本石猛裕選手とは、町田時代に一緒でしたね。

そうですね。(伊藤)圭汰やタケ(本石猛裕)を始め、どこのチームにいても自分のストロングポイントを出せる選手が多いと思います。自分の強みを出すのがうまければそのチームにハマっていくと思いますし、当時から町田はそういう選手が多かったと思います。

──数年前まで“黄色”だったイメージも、立川で3年目となりすっかり“青”の印象です。

移籍したからには、そのチームの選手としてやるべきことをやらないといけないと思っていますし、移籍をした瞬間から僕は立川の選手として戦ってきました。なので、青のイメージのほうが強いと思ってもらえるのはうれしいです。

──最後に、あらためてこの先の意気込みを教えてください。

個人としては、ゴールを取ってチームを勝たせること。どの試合でもゴールを狙って、1試合1点は取って、結果を残したいと思っています。

チームとしては、もちろん全試合勝つつもりですけど、そんなに甘いリーグではありません。先制点を取られたり、連続失点したりした時に、どうチームを立て直すかが、大事だと思います。今シーズンの登録は16人しかいないので、本当に全員で戦わなければいけません。サバスが相手のスカウティングをして、必要な時に、必要な選手を送り出してくれているので、僕らはその指示を遂行して、やるべきことをやっていくだけです。

──その先に、悲願の優勝が。

もちろん、優勝したいです。ただし、この取材時点で1位にいるのは、得失点差でわずかに上回っているだけ。最後はそこも重要ですが、1-0でも勝ちは勝ち。アスレとして全員が笑っていられるように、あの時こうしていればという後悔がないように。すぐに最下位も見えるリーグだと思いますし、1試合1試合、気を引き締めてやっていきます。

※取材協力:SAL@sal_japan